無愛想な王子は理想の花嫁に求婚する
「違います、そうではありませんっ!
こんなことでは二つ目の儀式が成功しませんよ!」

儀式の練習に無理矢理引っ張り出され、室内に講師の厳しい叱咤が響き渡るが以前のように体も頭も思い通りに動かなかった。

アレクシスとアネッサの会話を聞いてしまってから夜寝ると必ず悪夢に魘されるし、いつだって心の支えになってくれていた動物達は会いに来てくれない。

元々声が出なかったティアナの“声”を聞ける者はあまりにも少なくて、身も心もボロボロな状態に気づく者は誰一人いなかった。

「ティアナ様、どうしたんです?
疲労が溜まっているのもわかりますが、これまでのレッスンの成果がまったく出ておりません」

言われて思わず自分の服をぎゅっと握り締める。
このまま自分が婚約者として儀式に出る意味はあるのか、アネッサがいるのに……。

考え込みそうになるとパンッ!と手を叩く音が聞こえてきて顔を上げると講師が厳しい顔つきをしていた。

「今日はもう結構です。
このまま続けても意味がありません」

見放されたとすぐにわかったが何も言えずに頭を下げる。
講師が部屋を出ていく直前、これではアネッサ嬢の方がマシかもしれませんね。と呟いた声がしっかりと耳に届いた。
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