無愛想な王子は理想の花嫁に求婚する
今までは時間があればその度に中庭に言っていたが、最近は行っていなかった。
ぼんやりしながら歩いていたら部屋の前に誰かが立っていて、その人物に目を見開く。

「お久しぶりです、ティアナ様」

【ナタリー……】

柔らかく微笑むナタリーに涙が溢れそうになると、ナタリーは困ったように眉を下げた。

「あらあら、暫く会わない間に随分泣き虫になられたようですね」

近づき手を握られるとついに涙が溢れだし、ティアナは必死にナタリーに向かって口を動かした。

【ナタリー……会いたかったの。
話したいことも、聞きたいことも、たくさんあるの】

「はい、私も会いたかったです。
聞きたいことも、話したいことも、たくさんあります」

お茶の用意をしていると言われてナタリーに促され中庭に出るが、やはり動物達はいなくて気分が急降下してしまった。
周囲を伺っているナタリーも動物が来ないことに気づいたのか訝しげな顔をしているが、すぐに表情を戻しお茶を淹れ始めた。

「さあ、今日は今まで会えなかった分、たくさんお話ししましょうね」

用意が終わり席についたナタリーにティアナは小さく頷いた。
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