無愛想な王子は理想の花嫁に求婚する
まるで、馬と会話をしているようだな。

アレクシスが思った率直な感想がそれだったが、弛く頭を降ってその考えを打ち消す。
あまりにも非現実的な考えが浮かんだ己に呆れさえしてしまうほどだった。

「で、殿下!?」

厩舎の入り口から聞こえた慌てた声に二人が振り向くと、そこにはまだ若い少年とも言える年代の男の子が慌てて駆け寄ってきた。

「こ、こんな所にどうされましたか!?」

「少しジルに乗ろうと思った」

「わかりました!すぐにご用意致します!」

アレクシスの言葉を聞き厩舎の奥に駆け出す少年の後ろ姿を見送る。
どうやら馬の世話を任されているらしく、暫くすると少年は大きくて立派な黒馬を連れて戻ってきた。

この子がジル……?

外に出て、素晴らしい毛並みと凛とした佇まいの黒馬をじっと見つめていると、隣にいたアレクシスが、俺の馬だ。と呟いた。

【殿下の……】

「今からジルに乗って出かける」

【あ、はい。
いってらっしゃいませ】

ティアナは小さくお辞儀をして顔を上げるが、そこには何か言いたげなアレクシスの視線とぶつかった。

なんだろう?とティアナが首を傾げると、アレクシスはひとつ咳をして、馬に乗りたかったのだろう?一緒に行くぞ。と言った。

思ってもみなかった言葉にティアナはみるみる笑顔になると、元気よく頷いた。
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