無愛想な王子は理想の花嫁に求婚する
「いきなり宰相にここに連れてこられて、ご両親は心配してないかしら?」

“私は孤児なので、大丈夫です”

「まあ……では、ご両親はお亡くなりに……?」

突っ込みすぎた質問にアレクシスは眉を潜める。
ティアナは一瞬瞳が揺らぎペンを持つ手が緩むも、再度握り直してペンを走らせた。

“物心ついた時に捨てられました。
両親が健在かどうかはわかりかねます”

その文字に全員が驚き息をのむ。
記憶がある歳に捨てられるなど、どれだけ辛い思いをしたのか、その思いは誰にも計り知れない。
変わってしまった空気にティアナは困ったような顔をするが、突然王妃に手を握られ目を丸くする。

「ティアナ、そんな貴女が家庭を築くとしたら……貴女は相手に何を望むかしら?」

望み……。
とても難しい質問にティアナは戸惑い目を伏せる。

結婚など、自分は出来ないものだと。
一生一人で生きていくものだと。
両親に捨てられた時に言われた言葉は何年経っても消えず、未だにティアナの中に残り続けているが、もし、家庭を築けるのであれば……。

ティアナはゆっくり口を動かす。
読唇術が使えない王妃に読み取ってもらうために、ゆっくりと。

【変わることのない、愛情をーー】

その言葉に、王妃は満足そうに頷いた。
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