無愛想な王子は理想の花嫁に求婚する
「そんなに怒ったら、ダンスも楽しくなくなっちゃうよ」

声をかけながら広間に入ると、ティアナが肩で息をしながら驚いた様子でユアンを見ていた。

「ユアン殿下、何故ここに?
今はレッスン中です、お引き取りを」

「固いこと言わないでよ、協力するから。
ティアナ、こっちにおいで?
音楽をーー」

講師の鋭い視線を物ともせず、ユアンはティアナに近づきそっと腰を抱き寄せる。
所謂、ダンスの基本姿勢なのだが、慣れていないティアナはそれだけで顔を赤らめる。

可愛いなーー

ユアンの目が優しく微笑むのを見て、講師が溜め息をつきながら音楽を鳴らす。
ゆっくり動きだしたユアンにティアナは慌てて足を動かすがやはり上手くステップを踏めないようで徐々に慌てだす。

「慌てないで、ゆっくり。
俺のリードに合わせて」

至近距離なのでユアンの息がかかり、ティアナはますます赤くなる。
そんなティアナの様子がわかっていて、ユアンはあえて何度も話しかける。

長い時間そうしているうちに、ティアナはやっとユアンのリードで簡単なステップを踏めるようになった。

「ほら、出来た。
やっぱりダンスは楽しく、そして実践して覚えていった方が早いよ」

【はい、ありがとうございます】

お辞儀をしてお礼を伝えるティアナは満足そうな笑顔をしていて、可愛く見えて、やっぱりティアナが欲しい。とユアンは改めて思った。
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