無愛想な王子は理想の花嫁に求婚する
ここはクヴェル。
街と言うほど大きくもなければ、村と言うほど小さくもない。
大きな泉があって、底が透き通って見えるほど水が綺麗なのが自慢。
観光客が来るのはこの泉のおかげだと言ってもいいほどだった。

「のどかだ……」

アレクシスの婚約者候補探しに疲れた宰相は、着いたばかりのクヴェルの宿先でぼんやりしていた。

「お客さん、お疲れのようですね」

冷たい水の入ったコップを差し出しながら宿の女将が笑う。
どうも、と宰相がコップを受け取り一口飲むと、ほうっと息をつく。

「これは上手い。
ここでとれる水ですかな?」

「そうですよ、ここクヴェルは泉と水が有名ですからね。
たくさん飲んで疲れをとっていってくださいね」

「いや、本当にここは癒される。
悩みの種もなくなりそ……いや、なくならないな」

ぼそぼそぼやく宰相に女将は首を傾げると、そんなに重要な悩みでも?と聞いた。

「私にとっては重要です。
条件に当てはまる人を探してるのですが、いやはや、なかなか見つかりませんで……」

「条件?
そんなに難しい条件なんですか?」

「それはもう!いますか、この世に!
香水などつけない!化粧もしない!ドレスも装飾品も派手でない!お喋りがうるさくなく、地位を目的としない適齢期の女性など!!」

すごい剣幕で訴えてきた宰相に女将は若干腰が引けると、暫く考えて戸惑いながら、いますよ……?と答えた。
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