無愛想な王子は理想の花嫁に求婚する
「……早急すぎではありませんか?」

「いいえ、遅すぎるくらいよ」

アレクシスの問いに答える王妃の眼差しは鋭く、持っていた扇子をアレクシスに向けた。

「貴方がぼんやりしていたら、ティアナはフライハイト国、ユアン殿下に奪われます。
先手必勝、私はティアナを娘としてほしいのです」

「しかし……」

「それに、これ以上悠長に婚約者選びをしているわけにもいかなくなりました。
貴方の嫌いなタイプのお嬢さんが貴方と婚約したいと喚きだしています。
シュトルツ国最大貴族クリスティーネ嬢、ぼんやりしていては彼女が婚約者になってしまうわよ?」

言われて、クリスティーネ嬢を思い浮かべる。

香水の匂いがきつく、厚化粧、ごてごてしいドレスにこれでもかとつけられた装飾品。
勝手に腕に絡まってきてはずっと話続け、身分の低い者には横暴な態度を隠そうともしない、正に地位だけが全てだと物語っている行動。
アレクシスが一番嫌いとするタイプだが、その身分の高さから一番の婚約者候補と名乗りが上がっていた女性だった。

「彼女が行動する前に、形だけでもティアナを婚約者として披露なさい。
後のことはゆっくり考えればいいのだから」

「……仰せのままに」

アレクシスは礼をして退室の許可を得ると、その足で恐らくティアナの向かったであろう中庭に足を運んだ。
混乱しているであろうティアナに今の自分の思いを伝えるためにーー
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