無愛想な王子は理想の花嫁に求婚する
瞬く間にその日がやって来た。

宮廷にシュトルツ国の偉い人や貴族がたくさんやって来て、皆一様にきらびやかなドレスや装飾品を身に付けている。
定期開催されている舞踏会なのだが、ナタリーから婚約発表の時間も設けられていると聞かされティアナは顔面蒼白になっていた。

動物達には喜ばれ、宰相には感謝され、使用人のみんなにはお祝いされてしまい引くに引けない状況だった。
身分的にも王妃に婚約しろと言われたら拒否できないのだが……。

「とてもお綺麗ですわ、ティアナさん」

着替えを手伝ってくれていたメイド達がほうっと息をついた。
控えめなデザインのドレス、必要最低限の装飾品、ナチュラルメイク、今のティアナに似合うように髪型もセットしてもらうとそこには美しく着飾ったティアナがいた。

【ありがとうございます】

今回は紙やペンを持ち歩くわけにはいかないのでティアナは感謝の言葉をゆっくり口にすると、メイド達はみんな、とんでもございません。と微笑んだ。

「私達、嬉しいんです。
殿下の婚約者がティアナさんに決まって」

「殿下にとってティアナさんは理想の婚約者だったのでしょうけど、私達にとっても理想の主人になり得る方ですもの」

その言葉にティアナはそっと目を伏せる。
このままでいいのか……秘密を隠したまま、まだ気持ちのないまま、こんな大役に押し上げられてしまって……。

自問自答するティアナの心境を推し量ってか、メイド達は一礼して退室していく。
残っていたナタリーはそっとティアナに近づきそっと手に触れた。
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