無愛想な王子は理想の花嫁に求婚する
「女性に秘密は大きかれ小さかれあるものです。
余程の秘密ではない限り、みんなティアナ様を嫌うことなどありませんよ」

【それが、どんな秘密でも……?】

「そうですね、例えばティアナ様が実はスパイだったとか、暗殺を企てているとか、そんな秘密は困りますが……」

そんなことなどないと言いたげにティアナは必死に頭を振る。
折角のセットが乱れてしまいそうだとナタリーはその頭にそっと片手を添える。

「そういう秘密でもない限り、誰もティアナ様を嫌いません。
ここにいる全ての者達はずっと、ティアナ様の内面を見て惹かれて、今日の日を心から喜んでいるのですから」

まだ婚約発表の段階ですけどね。と笑うナタリーにティアナも連られて少しだけ微笑むと、ああ、でも……。とナタリーは呟いた。

「ティアナ様の秘密、もし打ち明けたいと思われる方が現れたら……その方がティアナ様にとっての“気持ちを寄り添わせられる人”なのかもしれませんね」

それがアレクシス様でなく、ユアン殿下だったとしても……。と続くその言葉を噛み締めるように、ティアナはそっと目を閉じた。
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