無愛想な王子は理想の花嫁に求婚する
ティアナは混乱していた。
突然現れた初老の男性に隣国に一緒に来てほしいと必死に頭を下げられたからだった。

仕事仲間に暫しの休憩をもらい話を聞くと、この人はシュトルツ国から休暇で来たバルテン宰相という偉い人だった。

バルテン宰相は必死にこれまでの経緯を話した。

シュトルツ国のアレクシス殿下が女性に興味を示さないこと、そろそろ適齢期なのに婚約者さえいないこと、見合いも拒否し続けていること、このままではシュトルツ国に跡継ぎがいなくなってしまうこと。

そして、アレクシス殿下が条件に合う人物を見つけてきたら会うと言ったこと。

その条件が、香水などつけない、化粧もしない、ドレスも装飾品も派手でない、お喋りがうるさくなく、地位目的でない適齢期の女性だそうだ。

「まさか休暇先で見付けられるとは思いませんでした」

最早涙ぐんでさえいる宰相にティアナは眉を下げる。

話を聞けば、アレクシスは“会う”と言っただけで“婚約する”とは一言も言っていないからだ。

宰相はそのことに気づいていないのか、必死にティアナに一緒に国に来てくれるよう頼み込むのだった。
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