無愛想な王子は理想の花嫁に求婚する
「ナタリーがいないと不安?」

揺れる馬車で所在なげにしているティアナに苦笑すると、ティアナは慌てて首を振った。

【そんなことありません。
ただ、ちょっと……】

「もしかして、俺と二人きりだから少しは意識してくれてる?」

公衆の面前で告白してから初めて二人で会うのだから緊張しない訳がなく、ティアナは答える言葉が見つからず小さく頷いた。

「あの時の言葉は嘘じゃない。
俺はティアナを簡単に諦めたくないくらい好きだよ?」

真っ直ぐな言葉にティアナは頬を染める。
だが、ドキドキはしていてもあの時中庭でアレクシスに“俺を選べ”と言われた時のような痛いほどの胸の高鳴りがなかったのがティアナには少し不思議だった。

「今日はどっちを選ぶとかそんなの忘れて楽しもうよ。
美味しいケーキを売ってる店を紹介するよ」

ケーキなどの高級品は平民には手も足もでなく、王宮でも数えるほどしか食べたことがない。
ティアナは目を輝かせると嬉しそうに頷いた。
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