無愛想な王子は理想の花嫁に求婚する
「淑女がそんな顔しないよ、驚いてるじゃないか」

「ユアン殿下……まさかその方が例の……?」

「そう、アレクシスと競ってる姫君だよ」

その言葉に令嬢達はさらに視線を鋭くする者、泣きそうに顔を歪める者と反応は様々だった。

「殿下、無礼を承知でお聞かせください。
何故、その方が殿下のお眼鏡に叶ったのです?」

「理由?理由なんてないよ。
ほとんど一目惚れに近かったからね」

柔らかく微笑むユアンに令嬢達は悔しそうに唇を噛み締める。

今まで王宮の中にいたからわからなかったが、ユアンもアレクシスも婚約者になりたいと切望する身元も確かで完璧な教育が施されている令嬢がたくさんいるのだ。
やっぱり、平民の自分では荷が重いのでは……。そう思ったとき突如大通りが騒がしくなり、ティアナもユアンも令嬢達もそちらに意識をとられた。

「なんだろう……行ってみようか」

ユアンの言葉に頷くと、人だかりが出来つつあるその場所に向かう。
その中心からは一目で高貴な身分だとわかる豪華なドレスと装飾品を身に纏った女性、その前に立つ背の高い男性が平民の小さな男の子に怒鳴っている現場が見えた。
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