無愛想な王子は理想の花嫁に求婚する
「あれは、クリスティーネ嬢……?」

まずいな……。と呟いたユアンを見上げると、男性が何に怒っているのかが聞こえてきた。
どうやら歩いていたクリスティーネ嬢に男の子が後ろからぶつかってしまったらしい。
平民が汚ない体でぶつかってきたからドレスが汚れてしまった、どう責任をとるのかといったことを言っているが、どこを見てもドレスが汚れてしまっているようには見えなかった。

「お、お許しください……」

「汚ない手で触るなっ!!」

男の子が許しを乞おうと男性に手を伸ばすが、あろうことか男性は男の子を街道に向かって蹴り飛ばしてしまった。
運悪くその街道ではスピードを出して荷馬車が通り過ぎようとしていて、誰もが男の子から目を離し、最悪の光景を頭に過らせた。

「ティアナっ!!」

反射的にティアナは街道に飛び出し男の子を庇うように抱き締めると、目前にまで迫った馬を見上げて、ティアナは大きく口を開いた。

【止まって!!】

途端に馬は立ち止まり、その場で足を一度地面に叩きつけ鼻を鳴らす。
気持ちよく走ってたのに邪魔をされた。という感じの馬にティアナは大きく息をつくと、ごめんね。止まってくれてありがとう。と声をかけた。
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