無愛想な王子は理想の花嫁に求婚する
「あら、小汚ない平民が一人片付くかと思ったのに……悪運が強いんですのね」

何の感情もこもってない瞳と言葉で令嬢に見下ろされ、ティアナは男の子をぎゅっと強く抱き締めるとユアンが慌てて駆け寄ってきた。

「ティアナ、大丈夫?怪我は?」

【私は大丈夫です。
それよりこの子が……】

荷馬車に轢かれそうになったショックで男の子は腕の中で青ざめ震えている。
ユアンはそれをみとめると令嬢に向き直った。

「シュトルツ国最大貴族と謳われるブリュッケル公爵家の者がする言動とは思えませんね、クリスティーネ嬢」

「まあ、ユアン殿下、お久しゅうございます。
今日も息抜きのお散歩ですの?」

クリスティーネ嬢と呼ばれた女性はユアンにカーテシーをすると、ティアナと男の子の事がなかったかのように微笑んだ。
そのあまりにもの変貌ぶりにティアナは目を丸くし、ユアンは眉を潜める。

「クリスティーネ嬢、貴女の執事が男の子を蹴り飛ばしたせいで大惨事になるところだった。
なにか言うことはないのか?」

「……なにかいけませんでしたか?」

こてん、と本当に不思議そうな顔をして首を傾げるクリスティーネに周囲の人々は俄にざわつき始めるが長身の執事の男が辺りを睨みつけると、しんと静まった。
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