無愛想な王子は理想の花嫁に求婚する
「平民風情がぶつかってきたのですよ？
お気に入りのドレスでしたのに……汚らわしくてもう着れません」

本当に困った。と言いたげなクリスティーネにティアナは思わず睨み付ける。

平民というだけで、何故ここまで見下されなければならないのだろう。
貴族はそこまで偉いのかとティアナは怒りに手が震えそうになるのを懸命に堪えていた。

そんなティアナにクリスティーネは冷たい視線を向けるが、すぐにユアンに視線を移す。

「ユアン殿下、私、ドレスを変えないといけなくなりましたのでこれで失礼いたしますわ。
ごきげんよう」

優雅な動作でカーテシーをして執事と一緒に去っていくクリスティーネを周囲の人々は黙って見送る。
やがて姿が見えなくなると、全員がわっとティアナに駆け寄ってきた。

「お嬢さん、大丈夫だったかい？」

「怪我は？その子も痛かったろう？」

「いやぁ、勇気あるねー。
馬の前に飛び出すなんて咄嗟に出来ることじゃないよ！」

一斉に駆け寄ってきた人々に囲まれて、次々に声をかけられたティアナは目を丸くする。
暫くすると男の子は後から騒ぎを聞いて慌ててやってきた母親に引き取られ、何度も頭を下げられティアナは恐縮していた。

その様子を少し離れたところから見ていたユアンは、一気に市民に受け入れられた様子のティアナを見て目を細めた。
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