無愛想な王子は理想の花嫁に求婚する
「アレクシス殿下、お久しゅうございます」

案内された応接間で待つこと数分、アレクシスがやって来るとクリスティーネは優雅に微笑みカーテシーをする。
扉を開けた瞬間に漂ってくる強烈な香水の匂いにアレクシスは思わず眉を寄せた。

「クリスティーネ嬢、今日はなんの用件で来た?」

「あら、用がなければ来ては行けませんの?
殿下の最有力婚約者だというのに」

「正確には婚約者候補だった、だ。
先日の舞踏会で正式な婚約発表がある予定だったのは知っているだろう」

「ああ、あの……」

茶番劇……。と言いそうになった言葉をクリスティーネは呑み込む。
実際、あの場で婚約発表がなされたらアレクシスはティアナのものになっていただろうが、ユアンの乱入で運よく免れた。

クリスティーネは生まれてからずっと王妃になるべく教育され、自身も王妃にならない未来など考えたことがなかった。
それほど自分の家の王族と釣り合うほどの貴族としての力、気品、美貌に自信があり、アレクシスに振り向いてもらうためにより自身を着飾りもしているのだが、それがアレクシスの苦手な女性像だというのは全く気づいていなかった。
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