無愛想な王子は理想の花嫁に求婚する
「この辺りの美味しいケーキでしたら、クーヘンという店が人気かと」

執務室に呼ばれたナタリーは、美味しいケーキがある店の場所を聞かれ驚きながらも答えた。
聞いてきた人物がアレクシスなので余計に驚いたようだった。

「まさか、殿下が行かれるのですか?」

「そのつもりだ」

「甘いものが嫌いな殿下が?」

「……」

「お一人でですか?」

「馬鹿を言うな。
ティアナと一緒だ」

「ああ、なるほど……ティアナ様のためですか」

途端にナタリーの顔に笑顔が浮かぶ。
クリスティーネのような傲慢な笑みでも、ティアナのような素直な笑顔でもない、意味ありげな含み笑い。

「……なんだ」

「いいえ?なんでもございません。
ただ、殿下が匂いすら甘ったるくて嫌だと申す場所にティアナ様のために行かれるなんて……感動すら覚えます」

「感動している顔には見えないがな」

「この顔は生まれつきでございますので」

素気なく返すナタリーに、アレクシスは頬杖をついて視線を反らす。
照れているのだろう、その無愛想の中にも浮かぶほんの少しの表情の変化にナタリーは今度は柔らかい笑みを浮かべた。
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