無愛想な王子は理想の花嫁に求婚する
執務が落ち着いて時間ができたある日、アレクシスはティアナと約束したケーキを食べに行こうと中庭に向かった。

いつものようにティアナは動物に囲まれているが、いつもと違うのはそのティアナの顔が赤かったこと。
そして、木の影に誰かいるのだろうか、何か言っている。

なんだ……?

なんとなく、アレクシスは遠目からその口の動きを追って読んでみた。

からかわないで、私は殿下のことを……

殿下?俺か、それともユアンのことか……。
まだ暫く見ていると、さらにティアナの口は動く。

だって、きっかけもわからないのに好きになったなんてわからないし……。
それに、まだ秘密を打ち明けられそうにもないし……

好き?秘密?

アレクシスが眉を潜めると猫が一鳴きしティアナが此方を振り向く。

【殿下、執務が終わったんですか?】

「ああ、今なら視察がてら街にいけそうだと迎えに来たのだが……」

言いながら近づき然り気無く木の影を覗くが、そこには動物達が座っているだけで誰もいなかった。

「今、ここに誰かいなかったか?」

【いいえ、誰も】

不思議そうに首を傾げるティアナは嘘をついてるようには見えず、アレクシスは動物達を暫く見つめていた。
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