無愛想な王子は理想の花嫁に求婚する
目の前には小さいサイズのいろいろなケーキがあり、ティアナは目を輝かせている。
たくさんあるケーキを選べずアレクシスが何個か注文してくれたのだが、いざ食べるとなったら見た目も可愛くて食べるのが勿体なく感じた。

「……食べないのか?」

【もう少し、目に焼き付けたいです】

「……できるだけ早くしてくれ」

おや?と思って視線を上げると、アレクシスは頬杖をつきながら外を見つめ端整なその顔をほんの少し歪めていた。
服の袖を軽く引っ張り此方に視線を向けさせると、じっとアレクシスを見つめる。

【具合が悪いですか?】

「悪くない」

【お疲れですか?】

「疲れてない」

【なら、何故そんなに顔を歪めているんです?】

ばつが悪そうにアレクシスは視線を反らそうとするが、ティアナがもう一度、今度は少し強い力で袖を引っ張ったのでアレクシスは嫌そうに視線を戻し口を開いた。

「匂い……」

【?】

「甘い匂いが、苦手なんだ」

その言葉にティアナは、えー!?と言う口の動きのまま固まっていた。
声が出ようものなら恐らく店内中に響き渡るほどの声だったかもしれない、それほどの驚きだった。
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