無愛想な王子は理想の花嫁に求婚する
執務室にあるソファーに腰かけたアレクシスの前にティアナが座ると、アレクシスは徐に口を開いた。

「フライハイト国クヴェル出身、名はティアナ。
相違ないな?」

「はい、ございません」

「香水もつけない、化粧もしないというのは?」

「間違いございません」

「……ドレスや宝石などに興味は?」

「微塵もありません」

「……皇太子妃という地位欲しさではないのか?」

「滅相もございません」

「………………」

質問に対して返ってくる答えに、アレクシスはついに片手で頭を押さえ項垂れた。
何故なら質問に答えているのはティアナではなく……

「宰相……お前はいつから俺の見合い相手になった……?」

「ご冗談を!私目が殿下の見合い相手になどなりますまい」

アレクシスの言葉に快活に笑う宰相に、アレクシスはついには頭痛がしそうだった。

ちょんちょん、と頭を支えている腕の袖を引かれる感覚に気付き視線を移すと、困り顔のティアナが何か書かれた紙を見せてきた。

“私は声が出せません。
筆談でもいいですか?”

僅かに目を丸くしてティアナを見ると、ティアナは申し訳なさそうな顔をしていた。
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