無愛想な王子は理想の花嫁に求婚する
「やはりそうでしたの。
あの女、やはり何か秘密を握っているのね?」

「はい、確かにユアン殿下はそれを肯定するようなことを言っておられました」

「そうでしょうとも。
でなければ私のような完璧な令嬢が婚約者に選ばれないはずがないですものね」

豪華に装飾された椅子に座り、クリスティーネは今にも高笑いしそうな気持ちをなんとか押し止め扇で自らを扇ぐ。
すぐ傍で顔が見えないほどまでひれ伏した青年、オスカーはいい仕事をしてきたようだ。

「褒美は母親の治療費だったかしら?」

「は、はいっ!どうかお願いしますっ!!」

「そうねぇ……もう一仕事してきたら、治療後の生活を一時保証しますけれど、どうします?」

ぎゅっと、絨毯の毛を握り締める手が目に入った。
暫しの時間が過ぎ、その手の力が弱まると、どんな仕事でしょうか……?とか細い声がした。

「これこそが本来の仕事です。
あの女が握っている秘密、それを暴いてきなさい」

「秘密を……?」

「一ヶ月だけ猶予を与えます。
それまでに暴いてこれなければ、最後の手段を使います」

「あの、それはどういう……」

にこりと微笑むと、少しだけ顔を上げた目の前のオスカーがさあっと顔を青くしたのが見えた。
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