無愛想な王子は理想の花嫁に求婚する
「ティアナさん、みんなのご飯、もらってきましたよ」

“いつもありがとう”

大量の野菜くずを持ってきたオスカーにティアナは持ち歩いている紙を見せた。
読唇術を使えないオスカーとは筆談をしているのだが、毎回オスカーは書かれた文字を見て笑顔を見せてくれる。

オスカーと知り合って三週間、動物を通じてより仲良くなれた気がしていたのだが……。

「いたっ!」

“大丈夫?”

オスカーの声に心配して見てみると、傷だらけの手に真新しい傷が増えていた。
すぐ傍にはいつもは人懐っこい猫がフーッ!と威嚇していた。

【駄目でしょ、怪我させたら】

【……】

注意をしても威嚇をやめる様子がなく、ティアナは困ってしまい眉を下げた。

「大丈夫ですよ、いつものことなので。
僕、ここのみんなには嫌われてるみたいですね」

悲しそうな顔をするオスカーに何も言えずにいると、僕、消毒してきますね。とオスカーが去っていった。

【……どうしちゃったの、みんな……】

【ティアナ、オスカーには近づかないで】

威嚇をやめた猫が鋭い目を向けるので思わずティアナは身を引いたが、すぐに、どうして?と猫と視線を合わせるように身を乗り出した。
< 95 / 218 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop