あの日勇気がなかった私たちは~卒業の日~
学校の門から駅までは10分程度の道のり。
友達とたわいもない話をしていればすぐに着く距離だ。

「・・・私ね、好きな人がいるんだ」

愛が突然つぶやく。

「好きな人?」

「うん、私バイトしてるでしょ?バイトの先輩を好きになっちゃって。今頑張ってアピールしているんだ」

そう言いながらはにかむ愛はまさに恋する乙女という感じだった。
こんなことをいうと悪いかもしれないが、愛に好きな人がいることは意外だった。
ミーハーでかっこいい人には目がないのは認めるけれど、この三年間彼氏がいたなんて話も聞かなかったから。

もしかするとずっとその人のことが好きなのかもしれない。

「いつから好きなの?」

「もう二年になるかな・・・はじめはただの先輩としか思っていなかったんだけど、そのうちほかのバイト仲間の女子と話しているのをみるのがつらいことに気付いて・・・それからずっとかな」

そこからお互いの最寄り駅につくまで、ずっとその話をしていた。
私は恋愛をしたことがないから、詳しいことはわからないけれど聞いている感じだとその先輩も#のことが気になっていそうだ。
先輩の話をする愛はとても可愛くて、うまくいってほしいなと思った。


< 23 / 97 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop