あの日勇気がなかった私たちは~卒業の日~
次の日から私たちは六時半から七時までは会話をすることが増えた。
といっても会話が弾んでいるわけではないけれど。
お互いがふと思い立ったように言葉を発し、相手が相打ちを打つ。そんな感じだった。
でもその絶妙なペースの会話が私の密かな毎日の楽しみになっていた。
「え、一ノ瀬くんも映画好きなの?」
「"も"てことは桜庭さんも好きなの?」
「うん」
そんなある日私たちはお互い映画好きだということを知った。
私は幼い頃から両親が共働きで一人で過ごすことが多かった。
平日は保育所や小学校があったから、あまり退屈さやさみしさを感じることはなかった。
でも二人とも休日も仕事に行っていて、どこかに旅行に行くこともほとんどなかった。
二人が仕事を頑張っているのはよくわかっていた。だからわがままをいって困らせてはいけないと幼いながらも理解していた。
しかしゴールデンウィークや夏休み明けにクラスの子たちが、旅行に行った話などをしているのに自分は家から出ていない、それがとてもさみしかった。
自分の家の周りしか知らない、一人っきりの休日が退屈でさみしい、そんな私にとって映画との出会いは衝撃的だった。
といっても会話が弾んでいるわけではないけれど。
お互いがふと思い立ったように言葉を発し、相手が相打ちを打つ。そんな感じだった。
でもその絶妙なペースの会話が私の密かな毎日の楽しみになっていた。
「え、一ノ瀬くんも映画好きなの?」
「"も"てことは桜庭さんも好きなの?」
「うん」
そんなある日私たちはお互い映画好きだということを知った。
私は幼い頃から両親が共働きで一人で過ごすことが多かった。
平日は保育所や小学校があったから、あまり退屈さやさみしさを感じることはなかった。
でも二人とも休日も仕事に行っていて、どこかに旅行に行くこともほとんどなかった。
二人が仕事を頑張っているのはよくわかっていた。だからわがままをいって困らせてはいけないと幼いながらも理解していた。
しかしゴールデンウィークや夏休み明けにクラスの子たちが、旅行に行った話などをしているのに自分は家から出ていない、それがとてもさみしかった。
自分の家の周りしか知らない、一人っきりの休日が退屈でさみしい、そんな私にとって映画との出会いは衝撃的だった。