あの日勇気がなかった私たちは~卒業の日~
冬休みが始まったが、受験生の私に休みはなかった。
朝起きて、学校と同じように時間を区切って勉強する。
夕方からはひたすら過去問を解く。

同じサイクルばかりでだらけてもいけないため、公立の図書館で勉強する日もあった。


たまに友達とはメッセージのやりとりをするが、みんな忙しそうだ。
莉子は毎日塾の冬期講習でヘトヘトらしい。

一ノ瀬くんとも連絡先は交換していたので会話しようとすればできた。
しかし特に話すことも見当たらなかったため、年明けに新年の挨拶だけ送信しておいた。
向こうもそれに返事を返してきてそこでおしまい。


毎年のように両親は31日まで仕事だった。
クリスマスも一人、コンビニのケーキを買って食べただけ。
年明けからは3日間両親も休みだったが、二人とも疲れがたまっていて初詣に行くこともなく家にこもりっぱなしだった。


(私のために毎日働いてくれてるんだもの。わがままで困らせてはいけない)

ずっと自分に言い聞かせてきたこと。わかってる。わかってるけれど・・・

(さみしい・・・)

家に帰ってもおかえりといってくれる人はいなくて、小学生の頃はそれがとてもつらかった。
映画は確かに私の孤独を癒やしてくれた。でもそれは一時的なもの。慢性的なさみしさはずっと抱えていた。


しかし大きくなるにつれて諦めの方が大きくなった。
仕方ない、そう思って諦めるようになった。
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