あの日勇気がなかった私たちは~卒業の日~
「ただいまー!」

「おかえりなさい。早かったわね」

「晩ご飯には早いから先に時計を買いに行こう」

「うん」


家に帰ってきて『おかえり』が聞けるのなんていつぶりだろう。
うれしくて涙が出そうになる。


「とりあえず、着替えてきなさい。その間にお母さんたちも準備しておくから」

「はーーい」



ーーーーーー

「改めて、」

「「澪合格おめでとう」」

両親が二人声をそろえて祝ってくれる。二人とも忙しいのにわざわざ時間を作ってくれて本当に嬉しい。
年中多忙な二人は明日からも出張らしい。


晩ご飯は生まれて初めて回転しないお寿司屋さんに連れてきてもらった。
お寿司自体はとてもおいしかったけれど、値段が気になって沢山は食べられなかった。

買ってもらった時計はずっと欲しかったブランドのもの。これからの大学生活で使っていこうと思う。
さらにもう一つ本は、本というよりは写真集というべきものだ。
世界各地の美しい風景を収めた写真集で、高校生がお小遣いで買うには少し高めのものだった。


買ってもらった日から私は時計をつけて遊びに行くか、写真集を片手にのんびり過ごすかの毎日だった。
< 75 / 97 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop