あの日勇気がなかった私たちは~卒業の日~
胸を張って得意げな愛にあきれていると、

「おはよー、愛、澪。すごいよね桜があんなに咲いてるなんて」

「おはよう。それだよ、ほんとに驚いた。」

「私たちラッキーだよねー」


女子の話題はやっぱり桜のこと。そりゃそうだ、まさか満開なんて誰も思わないだろう。



「よお、一ノ瀬」

「おはよ、今日なんか早いな」

「そりゃ卒業式だからな!遅刻するわけにはいかんだろ」

"一ノ瀬"という名前が聞こえて思わず後ろを振り返ってしまう。
相変わらずかっこいい。


「ねえ、澪はどう思う?」

「え?」

突然クラスの子に話をふられて答えに困った。

「もー、きいてなかったの?だから、一体誰が☆に告るだろうって話よ」

ドキッ

一ノ瀬くんに告白、そういわれて心臓が跳ね上がる。

「え?まさか澪も告ろうとしてた?」

「ま、まさか。私はしないよっ」

思わず否定してしまった。しかしクラスの女子のほとんどがいる中で、告白しますなんていえない。そんな度胸は私にはない。


「よかった。それを聞いて安心した」



新しい声の持ち主の登場にみんなが振り返ると、九重さんがちょうど登校してきたところだった。

「おはよ、杏奈。なんで安心したの?」

愛が先陣を切ってみんなの聞きたいことを尋ねる。
みんな九重さんの答えに興味津々だ。
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