あの日勇気がなかった私たちは~卒業の日~
「私、もう一度響に告白しようと思うの」


ドクン

心臓がさっきとは違う音を立てた。それになんだか胸がツキンと痛い。


「え?もう一度?」

どうやらこの中には一ノ瀬くんに告白しようと思っている人がいないようで、みんな興味本位で九重さんに沢山質問している。


「私、響に好きな子ができたからってふられたの。だけどそれから全く誰かと付き合う気配もないし、多分響は受験勉強に専念したくて私を振ったんだろうなって思って。だから受験も終わった今、もう一度伝えようって」

「えー!すごいね、杏奈ちゃん応援するよ」

「ほんとに?ありがとう。響ってモテるからきっと今日も沢山の人に告白されるでしょ?だから不安で」


本当にすごいよ、九重さん。私なら一度振られた人にもう一度告白なんてできない。
そんな勇気がないから。

それにしてもどうしよう。九重さんは可愛いし、性格も悪くない。みんなに平等な感じがするし。
そんな九重さんがもう一度告白するなんて予想外だった。
勝ち目なんてないじゃない・・・

そっか、好きな子ができたから九重さんをふったのか。
九重さんの予想もあり得るかもしれない。だけどその予想が合っていようが合っていなかろうが私に勝ち目はない・・・
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