あの日勇気がなかった私たちは~卒業の日~
なのにどうして?気づけば想いを伝えたくなって、彼女になりたいななんて思ってしまって。

毎日二人で勉強して、何回か駅まで送ってもらって、もしかして☆も私のことを好きだと思ってくれてるんじゃないかってうぬぼれていた。

告白すれば付き合えるんじゃないかって、錯覚していた。


「私のバカ・・・私みたいなのが付き合えるわけないじゃない・・・」

自分の愚かさがいやになる。初恋に夢を持ちすぎよ。少女マンガみたいな恋は現実にないってあんなに馬鹿にしていたじゃない、なのに本当は一番夢見ていたのは私だったんじゃない?


心の中で問いかければ問いかけるほど、自分がいやになる。


思い上がっていた自分が嫌い。いやになる。


一ノ瀬くんの席に近づき、右の指先で机の表面をなでる。

「好き・・・好きだよ、一ノ瀬くん・・・」



一ノ瀬くん本人に伝えられない言葉を一ノ瀬くんの机にぶつける。

(バカみたい、机に伝えたって本人に伝わるわけないのに・・・)


顔を上げて窓の方を見るともう夕方だった。世界が夕陽で赤く染まる、すごくきれい、きれいだけどーーー

「すごくさみしい色」


まるで私以外誰もいない世界のような・・・あり得ないことだけれどそう考えてしまう。
だけど誰もいない方がいいかもしれない。誰もいない方が静かに、ゆっくり感傷に浸れる。


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