あの日勇気がなかった私たちは~卒業の日~
「ただいま・・・」

誰もいないのはわかっているけれど、帰宅の挨拶を告げて自分の部屋に入る。



すぐにベッドに突っ伏してしまいたかったけれど、朝にとった桜の花を手帳から丁寧に取り出し、部屋にあった辞書に挟んだ。


そのあと、制服を脱ぐこともなくベッドに突っ伏す。


この半年本当に濃い半年だった。まさか今まで話したことのない人を好きになるなんて。



ーーー初めての恋はその気持ちを伝えられることもなく、散っていった。
後悔ばかりが胸に残っているけれど、☆と出会えたことに関しては全く後悔していない。



ベッドに突っ伏していたが、仰向けになりスマホの電源をつける。
莉子からも愛からも催促の連絡は来ていない。私から連絡が来ることを待ってくれているんだろう。内心は結果にやきもきしながら。


トークアプリの中から一ノ瀬くんの名前を探す。
明けましておめでとうという会話以来何も話したいなかったから、トーク履歴はかなり下にスクロールしなければ見つからなかった。

"あけましておめでとう"

"明けましておめでとう"


たったそれだけしかなかった二人の会話。数秒間その文字を見つめたあと私は、





「ありがとう」

そうつぶやいて削除ボタンを押した。
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