あの日勇気がなかった私たちは~卒業の日~
ねえ、一ノ瀬くん。


今まで私にとって恋愛はマンガの中だけの話だったの。
地味で存在感の薄い主人公にイケメンの男の子が気づいて結ばれる。そんなハッピーエンドはおとぎ話かマンガだけ。

そう思っていた私が恋に落ちるなんてね。1年前の私が知ったらすごく驚くだろうね。


たった半年、放課後にただ一緒に勉強しただけ。それも教えあいをしていたわけじゃなくて、ただ同じ教室にいただけだったけど。
それでも君との限られた時間は楽しかった。


好きって気づいてからはどんどん欲張りになっちゃって。結局告白もできなかったけれど。
どうか一ノ瀬くんは九重さんと幸せになってね。


この後悔は私が次の恋に出会って、それが成就したらなくなるのだろうか。それとも永遠に胸の奥に残り続けるのだろうか。

どうなるかはわからないけれど泣いたりするのは今日で終わりにする。明日からは前を向くから。


恋を、この気持ちを教えてくれてありがとう。
そしてさようなら。
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