この恋の終わりは
『もしもし』


2コールほどで
耳に当てたスマホから
彼の声が聞こえた。


こうして電話越しに
声を聞くのも最後かと思うと
もっと聞いていたくなってしまう。


でも、それは許されない。


「あの、着きました。」


『了解。上がってきていいよ。』


いつも通りの言葉に
「うん」と頷きそうになるのを我慢して
気持ちとは反対の言葉を口にした。


「…今日はお話があって来たんです。
外で話しませんか?」


『え?』


私の提案に
少し戸惑ったみたいだけど
すぐに「いいよ」と返事が返ってきて
エントランスに姿を見せた。


それはもう見慣れてしまった
スーツじゃないラフな格好の小川さん。
忘れないように
しっかり目に焼き付けておこうと
密かに決めて彼と向き合った。
< 79 / 94 >

この作品をシェア

pagetop