この恋の終わりは
小川さんは驚くでもなく
笑うでもなく、
こう言われることが
分かっていたような
表情を浮かべていた。


「俺…」
「だからもう会いません。
返事も要りません。
さようなら。」


何か言いかけた言葉に
被せるように終わりの言葉を放った。


これは私なりのプライド。


涙は見せない。


「もう、連絡しないでくださいね。」


彼の横を通り過ぎる時
そんな言葉を残した。




校庭を出て
アスファルトの上を
ヒールの音をコツコツと鳴らし
自宅への道を急ぐ。


当たり前だけど、
彼が追ってくることはなかった。


分かってる。
でも、どこかで期待している
自分もいた。


もしかしたら
彼女と別れて私を選んでくれるんじゃないかって。
抱きしめて名前を呼んで
愛してくれるんじゃないかって。
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