スイート ジャッジメント 番外編

 ボールを拾った湊は私の隣まで歩いてくる。

「そーだなぁ。とわは根本的に筋肉足りてなさそうだよね。とわ、懸垂できる?」

「出来ると思う?」

「思わない。握力幾つ?」

「…17だったかな」

「……低くない? 俺42とかそんなもんだった気がするけど。女子ってそんな低いもん?」

「……わかんない。みんなもうちょっとあった気もするけど……」

 ちょっとじゃないかも。私、クラスでもダントツで握力無かったかも。

「ほら、どう考えても馬力足りてないじゃん。でも、届かないことにはどうしようもないから、そこは頑張って投げようね? 距離感と力加減覚えればいいからまずは反復練習かな。はい、どーぞ」

 湊は私の手にボールを持たせると、にっこり笑う。

「まずはシュートが10本入るまで頑張ってね」

 笑顔で課された課題は、簡単なようで地味に難しい。なんせ私は、投げたボールがゴールに届かないんだから。それでも、距離感と力加減を覚えてと言うのは確かで、6本シュートが決まって以降は、前半が嘘のようにスムーズに入るようになった。

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