スイート ジャッジメント 番外編

 予算が取れた、取れなかった。論文が通った、通らなかった。実験データがおかしいから、最初からやり直しだとか、日々色々言っている。テレビや小説で見かけるどこか優雅な大学教授や准教授と全然違うし、学生の何かが終わらないと言っては今日みたいに週末も仕事に出かけるし、学会が週末にかかっていたらもちろん居ないし、実験次第では夜も帰ってこない。

「意外とシビアなんだね。工学部だったよね?」

「うん。でも何してるかよく知らないんだよね。私、聞いてもわかんないから」

 お父さんは理系だけど、私もお母さんも全く理系じゃない。だから、話されても解らないし、お父さんも詳細は話す気が全く無い。

「ってことは、俺がとわのお父さんの大学入ったら、とわのお父さんの授業受けたりしちゃうんだよね?」

「……そう、だね。可能性は0じゃないけど、でも、あと2・3年で転勤するはずだし、そんなに気にしなくても大丈夫だと思うよ。多分」

 言われてみれば家から通える国立大学だから、湊の受験候補に上がっていてもおかしくない。

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