スイート ジャッジメント 番外編
「大学どこ行くとか決めてた?」
「……まだ、決めてないけど……」
私の出方をちょっと伺うような湊の表情の意味はわかる。今は同じ高校だから毎日のように会える。でも進学先によっては、湊と遠距離恋愛になるかもしれないんだ。
進路希望調査を白紙で出したから、瀧先生には余計に心配されたし、いくつかおすすめの大学も教えてくれた。書道科のある所もリストアップしてくれたけれど、書道家になりたいかと言われるとよく分からないし、高校の国語の先生と言うのも……しっくり来ない。だって、男子生徒はちょっと怖いし、苦手だし、教えられる気がしない。
ずっと進路の事なんて考える気にならなくて、どこでもいいかなとか、湊の事を忘れられないなら、いっそ実家を出て誰も知らない場所に行ってしまおうかと思っていた。だけど、湊と付き合う事になった今は……湊と離れたくない。
「湊と離れるのは、やだ……な」
「俺も、嫌だよ」
肩を寄せあっていたのだから、顔を向ければ直ぐに額が触れる。
「まだ話終わんないのかな」
「あんまり長いと、怖いよね」
私の両親にとって湊は、示談交渉の時にしか話題に出たことが無かったはずだ。湊も似たようなものだよね? あえて確認はしていないけれど、湊だってそんなに私の事をご両親に話していたわけじゃないだろう。それでも、湊のお母さんが私に対して悪い印象を持っていないであろう事は、私も判った。