スイート ジャッジメント 番外編
判らないのは……、全然話もしないままの私のお母さんだ。
何度時計を見ても遅々として進まない針に、ため息をついて湊の肩に頭を乗せると、ちゅっとおでこにキスをされた。
「とわ、湊くん、もういいわよ」
お母さんの声に、私と湊は顔を見合わせた。呼ばれるまでは、いつまで話してるのかと思っていたのに、いざ呼ばれたら、なんだか叱られに行くみたいな心境になる。
「いこっか」
「うん」
意を決して部屋を出れば、母親達は玄関にいて、湊のお母さんは帰る支度をしていた。
「湊、帰るわよ」
「え?」
あ、あれ? と拍子抜けした湊と私を他所に、母親達は「また今度ゆっくり……」なんて話をしていたりして、そんな様を私も湊も置いてきぼりにされた気分で見てしまう。
「遅くなったらご夕飯に迷惑でしょう?」
「あ、うん。じゃあ とわ、またね?」
「うん、またね」
靴を履く湊の傍らで、湊のお母さんが笑う。
「とわちゃん、また遊びに来てちょうだいね」
「はい。今日はありがとうございました」
「湊くんも今度はちゃんと遊びに来てね」
「あ、はい」
「湊。あなた、挨拶くらいちゃんとしてくれる?」
湊のお母さんにせっつかれて湊が「お邪魔しました」と頭を下げた。