スイート ジャッジメント 番外編
ドアが閉まるのを見届けて、お母さんを見る。湊のお母さんと何を話したのか、聞いたら教えてくれるかな? そう思っていると、お母さんはため息混じりに口を開いた。
「世知辛い世の中よねぇ。個人情報だなんだって、そりゃ確かに大切だけど……」
お母さん、急にどうしたんだろう? と見ていると、お母さんは困った顔で笑った。
「去年の文化祭の後、教えてもらえなかったんだって。うちの、連絡先」
「……え?」
「文化祭の次の日、大和田さんのお嬢さんが見つかってから、湊くんお父さんとうちに来ようとしてたんだって。でも、向こうの弁護士さんに事情の説明とか色々したら、うちの捉え方次第では湊くんも加害者に近い扱いになる可能性があるから、とわと会ったり連絡したりするのは控えてくれって」
「……何、それ」
それは、文化祭の次の日? 湊が電話をくれた日? 会えないって湊が電話の向こうで、辛そうな……今にも泣きそうな声で言った日?
あぁ、どうしよう。あの日、湊はどんな気持ちで私に電話をくれていたんだろう。連絡するなって言われていたのに、湊は私に電話をしてくれてたんだ。それなのに私は……あの日、湊に何も言えなかった。