スイート ジャッジメント 番外編
湊にくっついていようと思っている訳じゃないけれど、ちぃちゃんがずっと体育館に居るし、美久ちゃんもバレーが終わってからは特に見る試合がなければ体育館に来ている。クラスで仲がいいのがちぃちゃんと美久ちゃんだけの私は、結果として殆どを湊と一緒にサッカー部の輪の中に居る事になっている。
「またすぐ別れるって。似合わないじゃん。あんな地味なの。さすがに次別れたらより戻したりしな──」
どこか個室の扉の開く音がして、不自然に会話が途切れた。
手を洗う水音に混じって聞こえたドアの蝶番の軋む音とドアの閉まる音。そして、訪れる静寂。
「とわ、出ておいで。もう大丈夫だから」
ちぃちゃんの優しい声がするまで、指1本、動かすことも出来なかった。
「自販機、行こう」
ちぃちゃんに手首を掴まれて自動販売機の所まで向かう道程、私もちぃちゃんも無言だった。
黙ってお茶を2本買ったちぃちゃんは、1本を私の頬に押し当てた。
「ふつーに考えたら、あたしは逆だと思うんだけど。あんな事あって、また付き合いだしたら……並大抵の事じゃ別れないでしょ」
そのつもりでしょ? と私に問うようにちぃちゃんは私を見て小さく笑った。