スイート ジャッジメント 番外編
不機嫌そうな湊に連れてこられたのはステージの舞台袖。幕の合間で人目につかない場所に湊は座って、すぐ隣の床を軽く叩いて私にも座るように促してきた。
「そいつに何もされてない?」
「……うん。大丈夫」
私は答えながら湊の隣にぺたんと座る。大丈夫、だと思うんだけど……。私としては何かされたとは思う様な事はなかったけれど、中学の頃の事はさっき武田に言われるまで全く知らなかったから、なんだか自信が無い。
「……まぁ、とわがそう思ってるならいいよ。……とわだしね。次の試合まで寝てもいい?」
言葉と共に湊の頭が肩に乗ってきて、よっぽど疲れていたのか直ぐに寝息が聞こえてきた。
とわだし、って湊まで言ったし。私だからなんだって言うの? 私、そんなに鈍い? 武田よりはマシじゃない? と少し不満だ。
武田にも普段は特に湊との事は話さない。だって、ただの惚気話にしかならない。同じように、相馬くんにも湊のことを話す機会も必要もなかったから、話したことがなかった。
来週は電車待ちの時にでも湊の事を話題に出そう。なるべくさり気なく、相馬くんへの予防線を張ろうと思った。