燻る紫煙
「沙耶加、昨日はちゃんと帰れた?」

パソコンに向かいながらも昨日のことをぼんやり考えていたら、

麻里の声で我にかえる。

「うん、大丈夫だったよ」

麻里にだって言えるわけがない。

初めて出会った人と、酔っていたとはいえその日のうちに関係を持ってしまうなんて。

自分でも信じられない。

初めて出会った人に、体を許してしまうなんて。

けれど、不思議と後悔はしていなかった。

「ならよかった!」

そう言って立ち去って行く麻里の後ろ姿を見ながら、

また私はあの人のことを考えてた。

なんでだろう。

あの人のことが気になって仕方がない。

もう一度会ってみたい。

どんな人なのか知りたい。

出会ってすぐホテルに誘うような人だ。

まともな人じゃないのかもしれない。

でも。

なんでだろう。

あの人は私にとって必要な人のような気がする。

あの人の目が、

あの人の体が、

私をとらえて離さない。

気がつくと。

私は席を立って、

あの人のスマホに電話をかけていた。
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