それならいっそ、消えてしまおう
…彩side…


最近、吐き気が強くなってきて学校に行けない日が出てくるようになってしまった。


俊哉には、だんだん誤魔化せなくなってきていてどうしたらいいのかもう分かんない。



ピリリリリリ、ピリリリリリ

断続的に続く頭痛に被せるようにしてなるケータイの音


誰だろ。俊哉かな

高校2年生が始まって今日は6月に入ったばかり、なのに私は休んでばっかで心配されるのも無理ないか。

ピッ

「もしもし?俊哉?」

「彩、最近どうした?」

「え、どうもしないよ!ちょっと、だるいかなぁぐらいだから」

なるべく明るく話してるつもりだけど、吐き気やばいし、頭も痛い。

「無理しなくていいから、今日彩ん家寄っていくよ」

寄っていく?待て待て待て待て、今の私絶対やばいでしょ。顔色最悪、食べれてもないから痩せてきてるし、部屋着だし、


「だ、だ、大丈夫だから!来なくていいよ!俊哉部活で疲れてるでしょ?」

「彩、」

「本当に!私は大丈夫だから!」



バン!

え?

「どこが大丈夫か、言ってみろよ」

ケータイ越しではなくて、ダイレクトに聞こえる俊哉の声。大きな扉の開く音とともに入ってきた俊哉の顔は怒っていた。


「な、んで、」

驚きと、今の私を見られた絶望感で声がうまく発せれない。


「なんでじゃねぇよ!また一人で抱えてんのか?そろそろ俺を頼ってくれよ…」


怒ってた顔がだんだんと自信なさげな顔に変わっていく。


頼れ。そう言われて頼れればこんな苦労はしないし、俊哉に嘘もつかなくていい。

それでも、頼れないのは私が弱いから。

頼って、もうすぐ死ぬ女って分かったら離れていくだろうし、友達だってやめてしまうかもしれない。

そんなことを考えれば考えるほど、素直に頼れなくなるんだ。


頼れよって言った俊哉は私が口ごもるのを見て「はぁ」と呆れたため息をついた。

そして続けて言葉が発せられる。


「離れねぇよ。てか、離れらんねぇから心配すんじゃねぇよバカ彩。」

「ば、バカは余計でしょ!」

「じゃあ、バカ以外は当たってんだな」

してやられた、誘導された。
私が喋らないのはお見通しだったみたい。

俊哉には敵わないな。ここまで必死に隠してきたのがバカみたい。
「ふぅ」と一息ついて俊哉を見る。

あーこれで、私たち恋人同士じゃ居られなくなるかもしんない。でも、ここで言わなきゃこれからずっと言えないだろう。

心に決めて、私は話し始めた。



話し終わって、俊哉のことをきちんと見れていなかったことに気づく。

俊哉を見ると、俊哉も私のことを見ていた。

「彩」

「ん?」

声が震えてる。何言われるんだろう。
もう死ぬようなやつに用はないって離れてくかな?
それとも、恋人じゃなくてただの友達に戻って最後までいてくれるのかな?
どっちにしても、恋人同士じゃいられなくなっちゃうや…

私の目に涙が溜まって、頬を伝う。

その瞬間、私は暖かさに包まれた。俊哉が私を抱きしめたんだ。頭を優しく撫でながら俊哉が言う。

「気づいてやれなくて、ごめんな。ひとりで辛かったろ?これからは、俺も一緒に頑張ってやる」

「もう、大丈夫だから」

強く言い聞かせるように私に大丈夫と言ってくれる。

私はその暖かさにまた涙が溢れた。

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