あなたを、海賊の僕が奪うから
香織がいつものように、外で潮風を浴びていた日のこと。この船の左から1隻の船が近づいていた。それに気がついた香織は声を張り上げ、この声を合図に船の中から他の海賊が香織の船に乗り込んだ。
香織は咄嗟に剣を抜き、数人の海賊の前に割って入った。海賊も剣を抜き、香織を見据えた。そして、海賊が剣を振り上げ、一気に香織へと飛びかかる。
「…香織、大丈夫?」
海賊の剣を受け止め、香織の前に立った湊が香織の方を向いた。その姿を見た香織は「誰も『助けろ』とは、言ってないでしょ」と冷たく言い放つ。
「何を言ってんの。こういう時に助け合うのが仲間ってものでしょ」
「そうですよ、キャプテン」
香織の四方を囲むように、4人の仲間が立ち、海賊に剣を向けていた。突如、強い雨が降り出し、船が横に大きく揺れた。
「…嵐だ!」
香織が空の状態を確認し、声を上げた。その時、船の揺れた衝撃で香織の体が船の外に放り出された。その刹那、香織の目の前が真っ暗になる。
「…香織!」
湊が船から飛び出し、香織の体を包み込んだ。湊と香織の体が海の中に沈み、流れに乗る。湊の意識は、そこで途切れた。