あなたを、海賊の僕が奪うから
海斗は、船室で嵐の時の記憶を辿りながらマニュアルをめくっていた。このマニュアルは、まだ彼が海賊になる前に父からもらったものだ。
海斗の頭に、香織と会った日のことが蘇った。それは、今から15年前の記憶――。
海斗がまだ10歳の頃。彼の家は、先祖代々船乗りをしていた。
父の船乗りに憧れた海斗は、毎日父が運航する船に乗っていた。しかし、いつものように船に乗り込もうとした海斗は、父に1冊のマニュアルを渡され、家にいるように言われた。
その日、父が乗っていた船は嵐に巻き込まれて行方不明となった。その船に乗っていた湊の父も同様に。
海斗と湊は、幼なじみで小さな村に住んでいた。海斗と湊は、浜に座り込んで泣いた。そこへ香織が現れた。
「どうして泣いているの?」
2人は、香織に父のことを話した。香織は、香織の父に頼み2人を船に乗せた。
「2人とも、海賊にならない?」
香織の父が海斗と湊を見ながら微笑む。2人は、大きくうなずいた。
(あの時のように、もう人を失いたくない)
海斗は、目を皿のようにしてマニュアルをめくっていく。
「…見つけた!」
海斗は、マニュアルに従い2人を探そうと舵に手をかけ、船を動かした。