あなたを、海賊の僕が奪うから
海斗は洞窟を進みながら、香織と湊がいなくなった時のことを話した。
「そのマニュアルに、1つの手紙が挟まっていたんだ。その手紙には、『大海に浮かぶ小さな島に宝を隠す』という文字と地図が入っていて、それがこの島なんだよ」
薄暗い洞窟を、照らしながら香織を先頭に歩く。その話に、香織は反応した。しかし、洞窟はここで終わっている。
「あれ、ここにお宝があるはずなのにな」
「ねぇ、香織?」
湊が立ち止まり、香織に声をかけた。香織をからかうためだ。
「…そのお宝は、香織だよ?…あなたを、海賊の僕が奪うから」
湊の言葉に、香織の顔が赤くなる。湊は意地悪そうな笑みを浮かべ、「冗談だよ」と言った。
刹那、洞窟の地面が崩れ落ちる。湊は、海斗と香織の体を包み、湊だけが地面に叩きつけられる。
「うわっ、天井が崩れたと思ったら…人が降ってきた!?あ、あの…大丈夫ですか?」
「うっ。大丈夫…」
湊は、よろめきながら立ち上がる。それを海斗が支える。
「た、助けてくれ!村まで海賊が来たぞ!」
この洞窟に1人の男性がやってきた。その村の村長は、白髪頭を抱えた。
「…私達は、海賊。もし、お宝をくれるのであれば――」
「お宝なんか要らない!さっさと海賊を倒して、帰ろう」
湊は、出口に向かって歩き始めた。それを聞いた村人が嬉しそうに湊を見つめた。