溺れろ、乱れろ、そして欲しがれ
小首を傾げて、腕組みをして、不機嫌オーラ全開で佇む東雲さん。

「あ、いやー、悪い悪い。今帰ろうとしてたから引き留めてさ。」

マスターがその場を取り繕うと慌てる。

別にやましくなんかないし、むしろ東雲さんの方が。

「なんで?」

「え?」

「なんで、帰ろうとしたわけ?そんでいつまで手握ってんだよ!」

「あー、っとごめんごめん。」

パッと手を離してそそくさとカウンターの内側へと戻ってく。

東雲さんの方が上手?強面のマスターがオドオドしてるし。

「で、帰りたいの?」

「いえ、来ないので帰ろうと思っただけで。」

「そう。なら来たから問題ないね。」

冷たい目を向けたまま、席へと促されて私はまた座り直した。


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