溺れろ、乱れろ、そして欲しがれ
その日、私の脳内を占領していたのは他でもなく、昼間見た東雲さんの姿

棚橋さんが言っていた、アメリカにいる恋人。

マスターが言っていた、本気になったのは一人だけ。

もしかしたら同一人物かも。

どんな人なんだろう

あぁ、頭がうまく働かない。

さっきから進まず仕舞いの入力作業。

「ふぅー、、、」

ついにはため息が漏れ出した。

「どうしたの?楢岡さんがぼんやりするなんて珍しい。」

「私、ぼんやりしてた?」

「うん。なんか悩みごとでも?」

「ううん。そういうわけじゃないけど。」

「恋でもしてるみたいですね。」

「え?」

「冗談です。仕事に生きるんですもんね。でも、なんだか少し前の自分と重なって。」

少し前のって、、、

梶谷さんは懐かしむように微笑むと、一蹴した。

「過去です。もう新しい恋探すから」

梶谷さんの横顔がいつになく凛としていた



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