溺れろ、乱れろ、そして欲しがれ
拒否しないで
今夜は何を作ろう

定時で帰れた私は食材片手に慶太の部屋へ向かう。

狭いキッチンに二人で並んでご飯を作る。

私が欲しかった休息の時間。

「あのさ、日曜日どっか行く?」

「うん。行きたいとこは?」

「どこでも。希の行きたいとこでいいよ。」

「じゃあ、映画みたい。」

「時間調べなきゃね。」

柔らかな笑顔にいつもホッとする。

慶太が出勤するまでのわずかな時間も、取り零さないようにそばにいたい。

「ねぇ、慶太。春彼岸、大地のお墓一緒に行かない?」

「うん、俺もそう思ってた。ちゃんと報告したいし。」

移り行く季節をこれからずっと慶太の隣で見ていくために。

新しい自分と真正面から向き合うためにも。




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