溺れろ、乱れろ、そして欲しがれ
慶太は優しい。

本当に優しいんだよ。

だから、それが今はしんどい。

部屋に戻ってきてからも、私と慶太の間にはもわ~んと嫌な空気が流れてる気がした。

「希、コーヒー飲む?」

「うん。」

コーヒーを淹れる慶太の背中をじっと見つめた。

この人はいつか私の手を離すんだろうか。

七海を選ぶ日が来るのかな。

またいなくなる。

嫌だ。一人は嫌だ。いなくならないで。

「希、顔色悪い。大丈夫か?」

いつの間にかテーブルの上にはコーヒーと、隣には心配そうに覗き込む慶太の顔があった。

「ん。ごめん、大丈夫。」

「もしかして、七海のこと気にしてる?」

「ううん。」

ダメだな私。

信じてと言った慶太の言葉をちゃんと信じてあげなきゃ。

「希、、、」

普段より1オクターブほど低く呼ばれる。

これは抱きたいの合図。

目を閉じると慶太の唇がそっと重なる。

立ちこめるコーヒーの香りに酔いしれながら、、、


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