溺れろ、乱れろ、そして欲しがれ
甘い雰囲気とかそんなんじゃなくて、ただ手を引っ張られてるだけなのに、、、

それだけなのに、熱くて嬉しくてどうしようもない。

「あの、いいんですか?彼女さんは?」

急に立ちどまって凄みをきかせながら振り返った。

「彼女じゃないけど?」

「でも、好きな人とか?」

「さあな。」

曖昧に濁して、フッと笑った。

その顔、、、

胸のずっとずっと奥がぎゅーっと掴まれて、溢れかえる想いをぐっと強く呑み込んだ。

繋がれていない方の指先が小さく震える。

「ちゃんと戸締まりしてから寝ろよ。」

いつの間にか部屋に着いていて、自然に手が解放された。

余熱が残る手を握りしめて、逃げないように閉じ込める。

「ありがとうございました。」

「ん。じゃあ、おやすみ」

「おやすみ、、なさい。」

どんどん遠くなる背中を黙って見送るしか出来ない。

あの人の所へ行くの?

二人で朝を迎えるの?

艶っぽい目で見つめて、低い声で囁くの?

好きって言うの?









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